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K・ウィルバー「グレース&グリッド」

乱読家の僕が読み返す、数少ない本のうちの1つ。
そして本当は、あらゆる人に「読め!!」と押し付けたい作品(笑)。

グレース&グリット―愛と魂の軌跡〈上〉/ケン ウィルバー
¥2,415
Amazon.co.jp

 

(西田のその他のおすすめブックのリストは
おもしろい研修HPへ)

 

原題はGrace & Grid
カタカナになっているけど、「恩寵と勇気」

副題は、Spirituality and Healing in the Life and Death of Treya Killam Willber
訳すと、「トレヤ・キラム・ウィルバーの生と死における精神と魂の回復」かな?

 

著者のケン・ウィルバー は要するに悟りと成長と人の心に関する、天才的な研究家。

 

哲学、宗教、社会科学、芸術、生理学、物理学・・・・
それらの全てにわたって、幅広く、かつ深い知識を持っている。

 

この本は、奥さん(トレヤ)の五年間のガンとの闘病の日記を交えながらの回想記。

トレヤとのドラマのような衝撃的な出会い、
愛し合う2人、ガンの宣告、発病・・・

 

そこから始まる、薬物療法に放射線療法に代替療法。

 

トレヤ自身も瞑想などをしっかりとやりこんでいる人だし、
ケンは心理学者でもあり、セラピストでもある。

 

その2人の自我を、身体を、関係性を、
癌という病が容赦なく叩き潰そうとする。

 

どれだけ悟りを研究しようが、彼らだって人間で、
残酷な病に直面し、治療の副作用にあえぎ、
介護という作業に疲れ、いとしい人を失う怖れに直面し、
泣き叫び、非難し合い、閉じこもり、酒におぼれ・・・

 

挙句の果てに介護者であるケン自身がひどい病に犯されてしまう。
それでも彼らは、進み続ける。

 

手を取り合いながら、胸に恩寵を抱きながら。

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僕はこのの2人から、「勇気」を見たんだと思う。

 

あらゆる苦しみを乗り越えていく勇気、
自らの弱さをさらけ出す勇気。
全てを手放し、天にゆだねる勇気。
そして同時に、諦めず進み続ける勇気。

 

トレヤからも、ケンからも、
「死ぬまで、生きる」という強いコミットメントを感じる。

 

恋について、愛について、
大切な人を失うことについて。
手放すことについて、あきらめないことについて、
献身について、自らを大切にする事について、

 

超越と慈悲、男性と女性性・・・

 

病について、代替療法について、悟りについて、
介助者の苦しみについて、使命について、
男性性と女性性について、愛について・・・

 

多岐にわたるテーマ、様々な物語。

 

10人が読んでも、20人が読んでも、
印象に残る部分も感想も全く違うものになるんだろう。
豊穣で、豊かで、情熱たっぷりで、
同時に静かで、静謐で、格調高い作品。

 

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肉体を持った僕たちが、超越するということは、
どれほど難しいことなんだろうか。

 

部屋の中での静かな瞑想ではなく、
この世界の荒波の中で。

 

歓びと、苦しみの繰り返すこの世界の中で、
全てを手放し、平静でいることの難しさ。

 

人として生きること、苦しみと喜びに飛び込んでいくこと。
個人としての自分を手放すこと。全てを静かに見つめ、微笑みかけること。

 

この一見相反する2つの作業を、同時にやり遂げること。
その引きちぎられるような狭間で輝く、人の存在としての美しさ。

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そんなわけで、指令性 (物怖じせず押し付ける力:byストレングスファインダー)
の強い僕は、こんなことを言ってみるわけです。

 

読んでみなさい。

 

とにかく、買ってみなさい。

 

今じゃないかもしれないけど、いつかページを開くときがあるから。
全部読まなくってもいい。途中で止まってもいい。
とにかく手元に置いて、必要を感じたときにいつでも手に取れるようにしなさい。

 

この本には、人生のすべてが詰まっているんだから。

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